低身長について Short stature

成長の指標

子供たちの成長の様子は、身長・体重を測定することにより、よくわかります。
身長と体重は、乳幼児健診、幼稚園・保育園、また小中学校の健康調査などで、定期的に測定されています。
この身長・体重の記録を継時的に手元に残しておくことが子供の成長を把握する第一歩となります。

成長のパターン

こどもの成長率は一定ではなく、乳児期と思春期に急激な身長の伸びがあります。 生まれたとき50cmだった赤ちゃんは1年間に25cmのびて平均75cmになります。それから1年毎に約10cm, 8cm,7cmと引き続きのびて4 歳では約100cmとなります。

その後は思春期に達するまでに、年間約6cmずつのびて、思春期には男児の場合13歳頃が最も良く伸び年間約10cm、女児では男児より早く11歳ころに年間約8cmのびます。このように、成長の変化が複雑な曲線になるのは、成長の過程でさまざまなホルモンが関与しているからです。

成長を調節するホルモン

成長に関係するホルモンは、脳のなかの下垂体という部分で、コントロールされています。下垂体から出るホルモンの中でも、成長ホルモンと甲状腺ホルモンは成長に欠かせません。
成長ホルモンは血液中に分泌され肝臓に働き、IGF-1という成長因子を作り、それが骨の軟骨細胞を増やして背を伸ばします。また、成長ホルモンは直接骨にも働きます。甲状腺ホルモンも骨の成長に作用します。さらに、性ホルモンは骨の成長と成熟に関係していて、思春期に性ホルモンが多く分泌されると急に身長が伸びて、その後は背の伸びが止まります。
また、それぞれのホルモンが活躍する時期は異なり、乳幼児期にはIGF-1や栄養が、小児期には成長ホルモンや栄養が、また思春期には性ホルモンが成長の主役を務めます。甲状腺ホルモンは全ての時期の成長に関係しています。

成長曲線をつけてみましょう

一人一人の子供の身長を判断するには、同じ性別・年齢の日本人の身長と比べます。ある年齢月齢が同じ子供の集団を、縦軸は人数、横軸は身長で表すと、グラフは平均身長を中心として左右対称の釣り鐘形となります。このような分布を正規分布といいます。一人一人の身長は、グラフの中心の平均からどれくらい離れているかで示し、これをSDスコア(標準偏差)という数値で表します。専門的には-2SD以下を低身長と考えてフォローします。実際に年齢月齢毎に身長をプロットして、線で結んでみましょう。身長が-2SD以下で推移している場合、成長率が低下してきている場合は、医療機関の受診をおすすめします。

成長曲線(簡易版)ダウンロード
【もみの木クラブ】

成長障害の原因

-2SD以下の低身長では、以下のような原因が考えられます。
約70%は体質性の低身長で治療を必要としませんが、約30%は詳しい検査や治療をした方が良い場合もあります。

1. 内分泌疾患
成長ホルモン分泌不全性低身長症
その他の内分泌疾患(甲状腺機能低下症、思春期早発症、尿崩症など)
18.0%
1.0%
2. 症候群
Turner症候群、Prader-Willi症候群、Noonan症候群、
Russell-Silver症候群、Kabuki make-up症候群、
その他の症候群
12.3%
3. 骨系統疾患 1.8%
4. 体質性低身長 66.9%

受診の時に持ってゆくと診断上有効な情報

母子手帳・幼稚園や小学校の成長の記録は必ず持参してください。家族の身長体重や思春期の情報、今までにかかった病気・服薬・入院の情報などを持参すると、診断の助けになります。

検査のながれ

成長の記録を一緒に確認します。身長、体重を測定し、思春期発達の様子などを診察します。手根骨(手の骨)のレントゲン、血液・尿検査なども必要です。採血の内容は個々に違う場合もありますが、甲状腺ホルモン、性ホルモン、IGF-1(成長ホルモンの一種類)、その他一般的な肝臓や腎臓の機能などです。さらに詳しい検査が必要な場合は、成長ホルモン分泌刺激試験などをすることもあります。

検査の結果、何らかのホルモンの異常や別の病気がかくれている場合は、治療が必要です。また、ホルモンの異常が無い体質性低身長の場合でも、最終身長が低くなる事もありますので、定期的な経過観察が必要になる事もあります。

背が伸びるために大切なこと

  • 睡 眠
    夜寝ている間に成長ホルモンは分 泌されます。ですから夜更かしせ ずに早寝早起きすることが大切で す。朝早く起きると朝ご飯が美味 しくいただけます。
  • 栄 養
    主食(ごはん・パン)、副菜(野菜・ きのこ・おいも)、主菜(お肉・お魚・ 卵・大豆)、牛乳・乳製品、果物な どを、バランスよく食べることが 大切です。
  • 運 動
    適度な運動をすることにより、食 欲が増し、さらに熟睡することが できます。激しい運動をしすぎる と逆に成長を妨げることもありま す。
  • サプリメント
    「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に
    関する日本小児内分泌学会の見解(2013年3月29日)

    1. カルシウム、鉄、ビタミンDを含んだサプリメントは、これらの栄養要素の不足により、成長が阻害されている場合には栄養要素を補充することにより成長が正常化する可能性はあります。しかし、これらの栄養要素の不足がない場合には、投与しても成長促進するという科学的なデータはありません。

    2. 成長ホルモンの分泌を促進するといわれている物質を含むサプリメントの代表的なものは「アルギニン」です。現在販売されているアルギニン製剤の投与量は、成長ホルモンの分泌を十分に上昇させる効果が少ないと考えられています。そのほか、アルギニン以外に宣伝されている物質に関しても、サプリメントとして投与した場合に成長ホルモンの分泌が促進されたという学問的なデータが、信頼できる学術雑誌に報告されたことはありません。